高齢者の方にとって、1日で摂取すべきエネルギーは想像よりも多いものです。メニューに換算してみると、結構な量の食事を食べる必要があり、こんなにも食べられない・・・と感じる方も多いでしょう。
この記事では、日本人の食事摂取基準についてや高齢者に必要な栄養素の摂取量、食事量の目安について解説していきます。日々の食生活と比較して、どのくらいの差があるのか、また何が足りていないのかを確認し、食生活の参考にしてください。
また、記事の後半では、高齢者の方におすすめしたい3つのレシピもご紹介しています。ぜひ、日々の献立の一つとしてください。
日本人の食事摂取基準とは
食事摂取基準とは、健康増進法を元に、国民の健康の保持や増進を図るために摂取が望まれるエネルギーと栄養素の量の基準です。5年ごとに更新され、現在の食事摂取基準は2020年版で、令和2~令和6年度まで適用されます。
健康的な個人や集団が食事摂取基準の対象です。エネルギーと栄養素の指標があり、エネルギーに関しては、摂取の過不足を防ぐのを目的として設定されています。栄養素に関しては、摂取不足を防ぐ指標と、健康に障害を及ぼす恐れがある耐容上限量がそれぞれの栄養素で決められています。
高齢者に必要な栄養素と摂取量
高齢者の方が食事で摂取すべき栄養素とその量について解説します。特に高齢者の場合は、たんぱく質が不足しがちです。たんぱく質が不足すると低栄養状態になりやすいため、注意が必要です。
また、女性は骨粗鬆症(こつそしょうしょう)を防ぐために、カルシウムの摂取には十分な配慮が必要です。
ビタミンや亜鉛などのミネラルも、皮膚や免疫、体の調子を整える上では重要な栄養素で、日々の食事からバランスのよい食生活を心がける必要があります。食生活が乱れがちな場合は、栄養補助食品を活用するなどして、栄養不足や偏りがないように気をつけましょう。
<エネルギー(推定エネルギー必要量)>
身体活動レベル | 男性Ⅰ(低い) | 男性Ⅱ(普通) | 男性Ⅲ(高い) | 女性Ⅰ(低い) | 女性Ⅱ(普通) | 女性Ⅲ(高い) |
---|---|---|---|---|---|---|
65~74歳 | 2,050 | 2,400 | 2,750 | 1,550 | 1,850 | 2,100 |
75歳以上 | 1,800 | 2,100 | – | 1,400 | 1,850 | – |
※身体活動レベル:
Ⅰ(低い):生活の大部分が座位で、静的な活動が中心の場合。(75歳以上は、自宅にいてほとんど外出しない者、また、高齢者施設で自立に近い状態で過ごしている者にも適用できる値である。)
Ⅱ(普通):座位中心の仕事だが、職場内での移動や立位での作業・接客等、あるいは通勤・買物・家事・軽いスポーツ等のいずれかを含む場合。(75歳以上は、自立している者に相当する。)
Ⅲ(高い):移動や立位の多い仕事への従事者。あるいは、スポーツなど余暇における活発な運動習慣をもっている場合
<3大栄養素の基準値>
栄養素 | 推定量・目安量 | 65~74歳 (男性) |
75歳以上 (男性) |
65~74歳 (女性) |
75歳以上 (女性) |
---|---|---|---|---|---|
たんぱく質(g/日) | 推奨量 | 60 | 60 | 50 | 50 |
脂質(%) | 目標量 | 20~30 | 20~30 | 20~30 | 20~30 |
飽和脂肪酸(%) | 目標量 | 7以下 | 7以下 | 7以下 | 7以下 |
n-6系脂肪酸 (g/日) |
目標量 | 9 | 8 | 8 | 7 |
n-3系脂肪酸 (g/日) |
目標量 | 2.2 | 2.1 | 2.0 | 1.8 |
炭水化物 (%) |
目標量 | 50~65 | 50~65 | 50~65 | 50~65 |
食物繊維(g/日) | 目標量 | 20以上 | 20以上 | 17以上 | 17以上 |
参考:「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書
高齢者の食事量の目安
ここでは、高齢者の食事量の目安について解説します。65〜74歳男性の身体活動レベルが普通の方の推定エネルギー必要量(kcal/日)は2,400kcalです。高齢者に必要なエネルギーをほぼ摂取できる1日の具体的な食事のメニュー例をご紹介します。
<朝食>
・トースト2枚
・目玉焼き
・ハムときゅうりとトマトのサラダ
・りんご
・牛乳
<昼食>
・鶏肉あんかけうどん
・フルーツヨーグルト
<夕食>
・ご飯
・肉じゃが
・魚のムニエル
・ほうれん草のおひたし
・豆腐とねぎの味噌汁
<おやつ>
・蒸しパン
・カフェオレ
3食と間食で、およそ2200kcal摂取できます。
高齢者が必要なエネルギーですが、意外にもしっかりしたメニューの食事を食べる必要があります。
高齢者におすすめしたいレシピ3選
高齢者におすすめしたいレシピ3選をご紹介します。
やわらかいお好み焼き風
キャベツ:100g
長ねぎ:25g
木綿豆腐:130g
卵:1個
片栗粉:大さじ1/2
顆粒だし:小さじ1
豚ひき肉:80g
長いものすりおろし:30g
紅しょうが:25g
<作り方>
キャベツとねぎはみじん切りにする
長いもはすり下ろし、豆腐は電子レンジ600wで1分半位加熱して水切りする
豆腐をつぶし、卵と長いもをよく混ぜ、さらに片栗粉を加えて混ぜて生地を作る
キャベツ、ねぎ、紅しょうがと顆粒だしを生地によく混ぜる
ひき肉をラップではさみ、つぶして薄切り肉のようにする
油を入れ温めたフライパンに生地を流し入れ、つぶしたひき肉をのせる
フライパン側が焼けてきたらひっくり返す
焼き上がったら、中濃ソースとマヨネーズをかけて完成
山芋のチヂミ
山芋:300g
もやし:1/2袋
わけぎ:3本
ベーコン薄切り:4~5枚
キムチみじん切り:大さじ3
小麦粉:大さじ4
水:大さじ1と⅔
塩:少々
サラダ油:大さじ1
糸とうがらし:適宜
すりおろしにんにく:小さじ1【つけだれ】
いりごま白:小さじ1【つけだれ】
しょうゆ:大さじ4【つけだれ】
ねぎ 小口切り:大さじ2【つけだれ】
ごま油:小さじ2【つけだれ】
<作り方>
もやしは熱湯でサッとゆで水気をきる
わけぎは2cmに切る
ベーコンは半分に切る
山芋をボウルにすりおろす
山芋にもやしとわけぎ、キムチを加えて混ぜ、さらに小麦粉を水で溶いたものと、塩を加えよく混ぜる
フライパンにサラダ油を熱し、生地の半分を丸く流し入れて焼く
縁が固まってきたらベーコンの半分を上に並べ、糸とうがらしをのせてひっくり返す
同様にもう1枚焼く。
焼き上がったチヂミを皿にのせ、【つけだれ】の材料を混ぜ合わせて添える
野菜だらけの柔らかドリア
大根輪切り(5mm):幅2㎝
人参輪切り(5mm):幅2㎝
さつま芋輪切り(1㎝):1/2本
ほうれん草みじん切り:1束
椎茸細切り:2個
玉ねぎくし切り:1/2個
山芋輪切り(5mm):2㎝
オクラ輪切り:2本
長ネギ輪切り(1mm):5㎝
赤・黄パプリカ角切り(1㎝):1/8個ずつ
コンソメキューブ:1個
牛乳:500cc
ご飯:茶碗1杯
スライスチーズ:少々
青さ粉:少々
<作り方>
食材は食べ易い様に切っておく
鍋かフライパンに食材をすべて入れ、火を点けほどほどの水を入れる
茹ったら水をは捨て、牛乳を入れさらに茹でる
ご飯とコンソメキューブを入れてしっとりするまで混ぜ合わせる
器にドリアの元を入れてチーズを好みの量をかけ、オーブンで170度で5分焼く
好みで青さ粉をかける
食事で不足している栄養は栄養補助食品で補おう
食事摂取基準で決められているエネルギーや栄養素を基準値の量まで摂取するのは、思っているよりも大変です。朝・昼・夜と三食しっかりと食事を食べ、更に間食を摂っても基準値に足りないこともあります。自分でも食べようといった気持ちがあっても、食欲が湧かなかったり、満腹になって食べきれないケースもあります。
日々の食事だけで摂取できない栄養素は、栄養補助食品を活用するのがおすすめです。手軽に摂取できるものが多く、食欲がないときでも摂取しやすいのが特徴です。食事はできるだけ食べるようにし、足りない栄養の分だけ栄養補助食品を利用する方法も、ぜひご検討ください。
まとめ:適切な食事量が体調を整える|栄養補助食品も上手に活用しよう
栄養素やエネルギーを摂取することは、身体の健康を維持するのに重要です。丁度いい食事量で、最適な栄養素が摂取できていれば、体力も維持しやすいでしょう。ただ、毎回の食事だけでは必要な栄養素をカバーできないのも事実です。
食事で足りない分は、栄養補助食品を上手に活用することをおすすめします。介護食の通販専門店”ビースタイル”では、数多くの種類の介護食や栄養補助食品を用意しています。病院にも導入実績がありますので、安心して日常の食事に取り入れていただけます。日々のお食事に是非ご活用ください。