嚥下機能が低下している方に提供する食事には、飲み込みやすくするためとろみ剤を使用する機会が多くあります。しかし、初めてとろみ剤を使用する方で、とろみ剤の選び方や使い方を詳しく理解している方は少ないでしょう。
この記事では、とろみ剤の基本的な知識やとろみ剤の選び方、使い方を解説していきます。どんなとろみ剤を選んだらいいの?といった疑問をお持ちの方は、自分の好みのとろみ剤を選ぶために、ぜひ参考にしてください。
また記事の後半では、おすすめのとろみ剤やとろみ剤を使った3つのレシピもご紹介しています。
とろみ剤とは
とろみ剤とは、食べ物や飲み物にとろみをつけ、飲み込むものを口の中から喉へゆっくりと流すために使用する食品です。とろみがあることで誤嚥を防ぎ、嚥下をスムーズに行うことができます。
(誤嚥とは、食べた食べ物が誤って気管支に入り、肺にまで流れてしまうことです。)
とろみ剤には2つの特徴があります。
加熱せずに短時間でとろみをつけることができる
使用量が決まっているので使いやすい
嚥下機能が低下している方には、普通の食事は飲み込みにくいので、とろみをつけたなめらかな食事が適しています。
とろみ剤の選び方
ここでは、とろみ剤を選ぶ際のポイントをご紹介します。とろみ剤は各メーカーからさまざまな商品が販売されており、自分の好みに合ったとろみ剤を選ぶためには、それぞれのとろみ剤の特徴を押さえておく必要があります。とろみ剤を選ぶ際のポイントは下記の5つです。
溶けやすくダマになりにくいもの
べたつきにくいもの
とろみを再調整(ゆるく・固く)しやすいもの
素材の色・味・香りに変化を与えないもの
飲み物の種類や温度に影響が少ないもの
このような特徴のとろみ剤は、料理へ与える影響が少なく、とろみをつけた料理でも違和感なく召し上がれます。
また、とろみ剤は第1世代のデンプン系、第2世代のグアガム系、第3世代のキサンタンガム系の3つに分類されます。それぞれ原料が異なり、新しい世代ほど使いやすく改良されているのが特徴です。
<とろみ剤の3つの分類>
分類 | デンプン系(第1世代) | グアガム系(第2世代) | キサンタンガム系(第3世代) |
---|---|---|---|
特徴 | ・素早く粘度がつく
・安定性が低い(唾液や味噌などの酵素の影響を受けやすい) ・使用量が多い ・においが変わる |
・温度によって粘度のつき方にばらつきがある
・少量で粘度がつく ・使用量が多いとくっつきやすい ・時間が経つと変化する |
・透明感がある
・まとまりやすい ・味やにおいが少ない ・温度によって粘度のつき方にばらつきがある ・時間が経っても変わりにくい |
商品例 | ・トロメリン顆粒 | ・トロミアップエース | ・ネオハイトロミールIII |
<その他の分類>
牛乳や流動食向けのとろみ剤 | ・スルーソフトリキッド |
とろみ剤ごとに特徴があり、その特徴を押さえた上でとろみ剤を選ぶことが重要です。基本的には世代が新しくなるごとに性能があがりますが、いち早くとろみをつけたい場合などは、デンプン系の第1世代のとろみ剤も活用しやすくなっています。
とろみ剤の使い方
とろみ剤の基本的な使い方をご紹介します。実際に使用する際は、とろみ剤のパッケージなどに記載されている手順も確認するようにしてください。
<とろみ剤の基本的な使い方>
パッケージ等に記載してある目安表で分量を確認する
食品にとろみ剤を入れ、すぐにかき混ぜる
溶かしたあとに2〜3分ほど放置する
とろみの状態や温度を確認してから食べる
混ぜたあとに放置すると、とろみの状態が安定します。とろみをつける食品やとろみ剤によってとろみの状態は変わるため、最後に必ず確認の上、召し上がるようにしてください。
素早く混ぜるほうがとろみはつきやすいです。お箸で卵を溶くように混ぜると上手に混ざります。また、牛乳や流動食などのとろみがつきにくいものは二度混ぜするのが効果的です。二度混ぜとは、とろみ剤を入れてかき混ぜたあとに、10分ほど放置します。そのあと、さらにかき混ぜて段々ととろみを強くする方法です。
とろみ剤を使用する際の注意点
とろみ剤を使用する際には2つの注意点があります。
とろみをつけすぎると誤嚥の原因になる
とろみ剤を入れたらすぐに混ぜる
とろみ剤の量が多すぎたり、とろみをつけてから時間が経過したりすると、とろみの粘度が強くなります。そのまま食べると喉にはりついてしまい、誤嚥の原因にもなるため注意が必要です。
また、とろみ剤を入れた際は、すぐにかき混ぜないとダマになりやすくなります。再調整できるとろみ剤以外は、失敗したら作り直しをする必要があります。とろみの調整に慣れていない場合は、再調整できるとろみ剤を使うのも一つの手段です。
よく使われているおすすめのとろみ剤12選
介護食や腎臓病食の通販専門店”ビースタイル”で購入可能なとろみ剤を12種類ご紹介します。
とろみ剤を使う食品や使う分量に合わせて好みのとろみ剤を選んでください。
①ネオハイトロミールIII
ネオハイトロミールIIIは、少量でとろみをつけられる強力なとろみ剤で、嚥下機能が低下している方にも使いやすい食品です。とろみのつくスピードも早く、お茶であれば30秒ほどでとろみがつきます。従来のとろみ剤では難しかった牛乳や流動食、100%果汁なども少量でとろみをつけられるのが特徴です。
【購入者様の声】
いろいろ使ってきましたが我が家はネオハイトロミールIIIが一番使いやすいです。
ダマになりにくく希望の形態(ヨーグルト状ではゆるく、マヨネーズ状よりもう少し重く、もったりした感じ)に調整しやすいです。一番はトロミをつける前の味を保ってくれることです。子どもがミキサー食なのですが、家族が同じもの(味)を一緒に食べることができます。
ビースタイルさんは価格が安く、発送もすぐなのでいつも助かっています。
②ネオハイトロミールNEXT
ネオハイトロミールネクストNEXTは、使いやすさと低コストの両立を実現させた次世代型のとろみ調整食品です。
飲み込むことが難しくなった方やむせることが多くなった方にお使いいただける商品で、ダマになりにくく、温かい飲み物にもきれいに溶けます。また、お茶やスポーツドリンク、牛乳、味噌汁にもしっかりとろみがつきます。
【購入者様の声】
施設勤務している介護職員です.市販のミキサー食では美味しくないと拒否する利用者様になんとか食べて頂きたくて普通食に出汁や味噌汁とトロミールを混ぜミキサー食を作ると美味しいと食べてくれる様になりました。今ではコスパもよく大容量のサイズが便利で施設使用のすべてを切り替えました.1年以上使用して利用者の家族にも喜ばれています。
③ネオハイトロミールスリム
ネオハイトロミールスリムは、素早く沈殿し、分解・溶解するといったネオハイトロミールR&Eと同じような特徴をもっています。とろみがつきにくい場合は、二度混ぜが効果的です。
【購入者様の声】
家では2キロを使っています。出掛けるときや預けるとき、入院中などは個包でないと困るので割高ではありますが常備しています。
私が知っているかぎりで一番お安いです。
④トロメリンV
クリア系のとろみ剤で、ダマになりにくく使いやすいのが特徴です。液状食品であれば同じ分量で同じ状態のとろみがつきます。ベタつきが少なく、食品の味をそのまま活かします。
液状のとろみ剤なので、ダマになることがなく手軽にとろみがつけられます。牛乳や流動食も簡単にとろみをつけることが可能です。30秒もかからず、素早くとろみがつき、時間が経過しても、とろみに変化は起こりにくいです。
⑥トロミアップエース
トロミアップエースは、ナトリウムの少ないとろみ剤です。少量でとろみをつけることが可能で、主に食べ物のとろみをつけるのに適しています。トロミアップエースを溶かしたあと、1〜2分でとろみをつけることができます。
⑦トロメリン顆粒
とろみをつけたい食べ物や飲み物をかき混ぜながらトリメロン顆粒を少しずつ加えてとろみをつけます。一気にたくさんの量を入れると、溶けにくい場合があるので注意が必要です。温かいスープにも、冷たいジュースにも混ぜるだけで簡単にとろみがつけられます。
【購入者様の声】
実母が食事の時飲み込む力が無くなり使い始めました。おかげで料理の工夫と共にトロメリンでむせることなく食べております。
⑧つるりんこ 牛乳・流動食用
つるりんこ牛乳・流動食用は、牛乳や流動食に混ぜるだけで、簡単にトロミをつけることができます。牛乳や流動食には対応していないとろみ剤が多いので、一つあると重宝します。
【購入者様の声】
病院から頂いているエンシュアに使用しています。だまになりにくトロミも付くので、有難いです。
⑨強力スカイスルー
強力スカイスルーの大きな特徴は、60℃以上で溶かしてから冷ますと、ゼリー状になることです。提供する食事に合わせて、とろみからゼリー状まで対応できます。冷たい飲み物はもちろん、牛乳などにも強いとろみをつけられます。
⑩REF-P1(レフピーワン)
牛乳などのカルシウム含有量が多い液状食品にとろみをつけることができます。食物繊維、水分補給にも役立ちます。
⑪ハイトロミール
少量で強力なとろみがつきます。ミキサー食などの高い粘度が必要な場合に適したとろみ剤です。食品を選ばずにとろみをつけることが可能です。
⑫リフラノン
濃厚流動食専用のとろみ剤です。経腸栄養剤・濃厚流動食に混ぜれば、軽めのとろみから、プリンのようなゲル状まで調整が可能です。温めたり、冷やしたりする必要がないため、使いたい時にすぐ使用できますが、水やお茶などの飲料は固まらないため注意が必要です。
【購入者様の声】
パーキンソン病の患者さんが誤嚥性肺炎を繰り返し、入退院を繰り返しておりました。経口摂取は無理と医師に宣告され、胃ろうをつくりました。最初奥様もとても悩まれましたが、私と一緒に頑張りましょうということで、介護者に負担の少ない半固形食をチップで注入する方法を取りました。
半固形食の注入は介護者の負担が少なく、ご本人の負担も少ないことは分かっておりました。半固形食の注入は、逆流が少なく、誤嚥性肺炎になり難いのです。半固形食の利点は、理解していても、経済的負担が大きいため、ご家族にお勧めすることを躊躇しておりました。ネットでリフラノンの存在を知り、保険適応のインシュアHを使っての半固形食注入が可能になりました。何よりも嬉しいのは、安価で継続できる事です。おかげさまで、今は、肺炎が重症化することもなくなり、入院することもなくなりました。在宅療養の継続が順調に出来てます。先日、インフルエンザに罹患し、肺炎併発しましたが、早期に訪問診療をしていただき、重症にならないですみました。経口摂取できなくとも、リフラノンのお陰で高カロリーを注入し続けられたられたから、体力も落ちずに回復が早かったのだと思います。リフラノンは救いの神様です。これからも宜しくお願い致します。
とろみ剤を活用したおすすめレシピ3選
とろみ剤を活用したおすすめレシピを3つご紹介します。
介護食の白身魚のムース
白身魚(正味量):100g【ムース】
はんぺん:90g【ムース】
長芋:50g【ムース】
全卵:1個【ムース】
サラダ油:大さじ2【ムース】
塩:適量【ムース】
白だし:適量【和風あん】
醤油:適量【和風あん】
水:適量【和風あん】
とろみ剤:適量【和風あん】
<作り方>
白身魚の骨と皮を取り除き細かく切る
はんぺんを小さくちぎる
長芋はすりおろしておく
フードプロセッサーに白身魚とんぺん、卵を入れてなめらかになるまで回す
さらに長芋とサラダ油を入れてまんべんなく混ぜる
油を薄く塗ったシリコン型にムースの元を流し入れ、蒸し器で20分加熱する
型に入れたまま冷凍し、固まったら型から外し、冷凍で保存する
食べる際は食べる分だけ解凍し、和風あんをかけて完成
肉じゃがムース食
じゃが芋:170g
人参:40g
玉ねぎ:40g
豚肉:100g
しょうゆ:小さじ1/2
酒:小さじ1/2
はちみつ:少々
砂糖:小さじ1/2
だし汁:100ml
とろみ剤:大さじ1
<作り方>
玉ねぎは薄切りにして、人参は薄い輪切り、じゃが芋は1cm角のサイコロ状にする
耐熱容器に玉ねぎ、じゃが芋、人参の順番に重ねて、細かく切った豚肉をのせる
だし汁・はちみつ・酒・しょうゆをかける
ふんわりラップをかけて、電子レンジの500Wで10分加熱する
冷めたら、フードプロセッサーに汁ごと入れる
とろみ剤入れて混ぜてムース状になったら完成
人参とごはんのポタージュ
人参:60g
牛乳:100ml
バター:2g
砂糖:2g
コンソメ:1g
食塩:0.2g
とろみ剤:適量
コーヒーフレッシュ:1/2個
<作り方>
人参をスライス状に切る
耐熱容器に入れ、人参が浸るくらいの水を入れて電子レンジで加熱する
人参がスプーンでつぶせるくらいになったら、水を捨て、バターと砂糖を加えて混ぜる
電子レンジの600Wで4〜5分加熱する
加熱が終わったものと牛乳を合わせて、ミキサーにかける
鍋に移し、ヘラでかき混ぜながら、弱火で加熱する
コンソメと食塩を加え、味を調整する
とろみ剤でとろみをつける
器に入れ、コーヒーフレッシュをたらしたら完成
まとめ:とろみ剤への理解を深めて安全でおいしい介護食を作ろう
とろみをどの程度つけるかは、嚥下障害のレベルによって調整する必要があります。症状にあわせたとろみの状態を選択し、安全でおいしい介護食を作ってくださいね。
また、とろみ剤の種類はたくさんあり、何を選べば良いか分からないという方は、本記事で紹介した商品から選んでみてください。紹介している商品は、介護食の通販専門店ビースタイルで購入可能です。とろみ剤を購入の際は、ぜひ活用してください。
介護食の通販専門店”ビースタイル”では、数多くの種類の介護食や栄養補助食品を用意しています。病院にも導入実績がありますので、安心して日常の食事に取り入れていただけます。介護食や関連商品をお探しの方はビースタイルをチェックしてみてくださいね。