介護食が目覚ましい進歩を遂げたおかげで、今は噛む力や飲み込む力が弱まっても食べることを楽しめるようになりました。
さらに介護食の新形態として注目を集めているのが、「形そのままの介護食」です。「ムース食」や「ソフト食」とも呼ばれるやわらか食の一つで、従来の嚥下食とは異なるメリットがあります。
今回の記事では、この「形そのままの介護食」でこれからも食事を楽しむためのポイントを解説します。
これまでのようなきざみ食やペースト食とはどう違うのか、お体に合った介護食を選ぶために必要な知識や、人気の食材などについても紹介します。
ストレスフリーな最新の介護食を選ぶためのガイドとして、ぜひご活用下さい。
介護食の形「そのまま」がいいのはなぜ?
これまで、嚥下困難の方のためのやわらか食は、細かく刻んだきざみ食や、ミキサーで攪拌したペースト食が一般的でした。
ですが、ドロドロした形状は本来の食材とあまりに異なるため、食欲が湧かなくなってしまう方がいらっしゃいました。
そこで、開発されたのが「ムース食」や「ソフト食」です。食材をミキサーで液状にしたものをゲル化剤(固形化調整剤)などで固め、本来の食材の形を再現しているため、見た目がとても通常の料理に似ています。
また、誤嚥が起きやすいペースト食とは異なり、これらは見た目と食材が一致しているため、安全面でも評価されています。
これまでの介護食は主に機能面のみでしたが、今はきちんと「食べる楽しみ」も味わえるように進化しているのです。
形そのままの介護食 調理方法は?
ムース食やソフト食は常温保存できるものが多いため、そのままでも召し上がれます。温める場合でも、電子レンジで約30秒ほど調理すればよいので、とてもお手軽です。
形そのままの介護食を選ぶには ユニバーサルデザインフード
ムース食やソフト食といった「形そのままの介護食」を上手に選ぶには、最初に「ユニバーサルデザインフード(UDF)」について押さえておきましょう。
ユニバーサルデザインフードとは、日本介護食品協議会が定めた規格により、食べやすさに配慮していると認められた商品のことです。
ユニバーサルデザインフードの商品は、すべてロゴマークが記載されています。介護食のやわらかさによって4段階に分かれているので、まずはご利用する方の区分を知っておきましょう。
UDFの区分:容易にかめる
「容易にかめる」は、ユニバーサルデザインフード(UDF)の区分では最も硬さが残っており、ある程度噛んだり、飲み込んだりする必要があるものです。主に、普通~やわらかいご飯、焼き魚、厚焼き卵、やわらかい肉じゃが、白桃の缶詰などが目安となっています。
UDFの区分:歯ぐきでつぶせる
「歯ぐきでつぶせる」は、ユニバーサルデザインフード(UDF)の区分で2番目のやわらかさです。主に、やわらかいご飯や全粥、具材が小さめな肉じゃが、煮込みハンバーグなどが目安となっています。
UDFの区分:舌でつぶせる
「舌でつぶせる」は、ユニバーサルデザインフード(UDF)の区分で3番目のやわらかさです。主に、全粥、スクランブルエッグ、さらにやわらかい肉じゃが、絹ごし豆腐などが目安となっています。
UDFの区分:かまなくてよい
「かまなくてよい」は、ユニバーサルデザインフード(UDF)の区分で最もやわらかいものです。主に、ペースト粥やペーストの肉じゃが、具なしのやわらかい茶碗蒸し、やわらかいプリンなどが目安となっています。
形そのままの介護食 人気の食材2選
ムース食やソフト食といった「形そのままの介護食」で特に人気の食材を2つ紹介します。外食がお好きだった方への贈り物にもおすすめです。
人気の食材(1)根菜類などの硬い食材
形そのままの介護食で人気の食材は、根菜類などの硬いものです。
これまで、根菜類のように硬い食材はきざみ食やペースト食しかなかったため、食材の状態とは異なった外見に食欲をなくしてしまう方がたくさんいらっしゃいました。
そのため、食材の形をきれいに保つムース食やソフト食に根菜類の料理があるのを知り、とても喜ばれます。
ご高齢の方が好まれる和食メニューが多いことも人気の理由です。
人気の食材(2)うなぎや鯛などの高級食材
形そのままの介護食で人気なのは、うなぎや鯛などの高級食材です。
これらはそもそも介護食にはないと思っている方も多いため、あると知ってとても喜ばれます。
味の再現度も高く、魚の旨みを十分堪能できます。中には高級料亭監修のものもあるので、贈り物にも最適です。
うなぎや鯛はどちらもやわらかな食材ですが、ミキサーにかけても小さな骨を完全に取り除くのは難しいため、市販品のムース食やソフト食の利用をおすすめします。
やわらかさ順に紹介!市販品のおすすめ介護食3選
ムース食やソフト食などの形そのままの介護食は、市販品でも豊富に販売されています。ここでは、「歯ぐきでつぶせる」からペースト状態までおすすめを3選紹介します。
【冷凍】あいーと 筑前煮 102g
あいーと筑前煮は、家庭でも親しみ深い料理を、比内地鶏のだしで炊き上げた奥深い一品に。
見た目は普通の食事。舌でつぶせる冷凍介護食あいーとを是非お試しください。
エバースマイル 和風メニュー 9食セット 介護食 ムース食 舌でつぶせる
「エバースマイル 和風メニュー9食セット」は、ユニバーサルデザインフードの区分で「舌でつぶせる」新しいムース食です。
「和風ハンバーグ」の場合、ハンバーグのムース・ほうれん草のムース・にんじんのムースの3つが入っており、それぞれの見た目が本来の形にとても似ているため、食べる楽しみがあります。
また、調味液(あん)とムースを和えながら潰すことで、お好みのやわらかさに変えられます。
【セット内容】
鮭と野菜のあんかけ・肉じゃが・和風ハンバーグ・やきとり・牛ごぼうの生姜煮・筑前煮・鶏とかぼちゃの煮物・きんぴらごぼう・たけのこの土佐煮
栄養支援茶碗蒸し 6種セット
「栄養支援茶碗蒸し」は、噛む力や飲み込む力が弱まっている方でもやわらかくて食べやすい、風味豊かな茶碗蒸しです。
温めてもプリン状の形状を保ち、摂食を支援する方が召し上がるときに温めて「温刺激」が活用できます。
1個当たり(75g)のエネルギーを100kcalにアップしました。
セットにはかつお風味、ほたて風味、まつたけ風味、たい風味、とり風味、えび風味が1個ずつ入っています。
まとめ:味にも見た目にもこだわりの介護食をリーズナブルに
ムース食やソフト食といった「形そのままの介護食」は、味も見た目も通常の料理に近いため、食欲が沸きやすい特長があります。
また、一目で内容がわかるため、誤嚥を防ぐことができ、安全面からもおすすめできる食品です。
これまでのような「何とか栄養を摂らせる」といった機能面だけを重視したものではなく、「食べる楽しみ」を感じられる食事が次第に増えてきています。
根菜類やうなぎといったお好みの食材も取り入れることで、さらに食事を楽しめるでしょう。
種類によりますが、リーズナブルな商品も多いので、ぜひ普段の食事に活用して下さい。